「ビッグ・ハグ」発問・指示 |
親の大きな愛、無償の愛を伝える授業です。大森塾(2001.8.5)で模擬授業をしたときのものです。
資料1はこちら 資料2はこちら
【動物の胎児1提示】
発問1 これは動物がお母さんのおなかにいるときの姿です。人間はA〜Eのどれだと思いますか。 |
A〜Eまできいていく。
発問2 さあ、あたっているか、みてみましょう。お母さんおなかの中でもう少し時がたちました。【動物の胎児2提示】さて人間はどれだと思いますか。 |
Cは魚と予想できるので、ABDEの順にきいていく。
説明・語り1 では正解をみてみましょう。【動物の胎児3提示】 Aは犬、Cは魚、Dはカメ、Eはブタ、人間はBなのです。実は人間の赤ちゃんは、お母さんのおなかの中で生物の進化の歴史をたどるといわれています。赤ちゃんは最初たった一つの細胞から始まります。針の穴ほどの大きさです。それが成長し魚のようになり両生類、は虫類、ほ乳類、そして人と、ものすごいスピードで進化していくのです。 |
発問3 実はこの進化が激しいころお母さんの身体にも変化が起きます。なんだとも思いますか。 |
列指名できいていく。
説明・語り2 そうです。つわりです。赤ちゃんができた最初の頃、はきけがしたり食欲がなくなったりすることがあります。それをつわりとよんでいます。 赤ちゃんができると、つわりだけではなく、動きにくくなったり、体が痛くなったりします。でもお母さんは赤ちゃんのために食べ物に気をつけたり、定期的に病院に行ったりして、赤ちゃんが丈夫に育つために一生懸命いろいろなことをします。 |
説明・語り3 お母さんのおなかの中で約40週間、守られて赤ちゃんはようやくうまれてきます。この赤ちゃんもそうです。【力也君の写真 提示】。名前は浅井力也君といいます【力也君の写真2 提示】。1984年12月15日に生まれました。しかし、力也君は生まれてくるときに呼吸困難となり十分に息をすることができませんでした。そのために脳性麻痺になってしまいました。脳がまひするということです。 |
発問4 脳性麻痺になるとどうなると思いますか。箇条書きに書いてごらんなさい。 |
(3分後)列指名で聞いていく。
説明・語り4 脳が麻痺してしまったわけですから、いろいろな障害をもちました。うまく話すことができない。手足が自由に動かない。お医者さんは長く生きることさえ難しいと言いました。じつは力也君は、脳性麻痺のために体温調節がうまくできなかったのです。そのため冬になり寒くなるとすぐに高熱を出し肺炎になりました。救急車で運ばれ生死をさまよったことが何度もありました。 |
発問5 冬になると熱を出してしまう力也君。お母さんはとても心配しました。力也君のお母さんです。【力也君のお母さん 提示】お母さんは力也君のために何をしたと思いますか。書いてごらんなさい。 |
指示1 書けた人から黒板に書いてください。 |
書けたものを読んでもらう。 正解はあとで告げる。
発問6 実は力也君の障害はそれだけではありませんでした。食べ物をうまくかむことができませんした。そのためお母さんはどうしたと思いますか。 |
列指名で聞いていく。
発問7 そうです。自分の口で食べ物を細かくかみくだいてから食べさせてあげました。 しかし、口の中というのはばい菌がいます。いくら歯を磨いても完全にばい菌をなくすことはできません。そこでお母さんはどうしたでしょうか。書いてみてください。 |
指示2 これも書けた人から黒板に書いてみてください。 |
書けたものを読んでもらう。
資料1をくばり読み聞かせる。
感想をきく。
説明・語り5 長く生きることさえ難しいと言われた力也君は、今16歳になります。元気にハワイで過ごしていいます。しかし力也君のすばらしさはそれだけではありません。 浅井力也君を紹介したHPがあるのでみてみましょう。【力也君のHP 提示】実は力也君は今、天才画家として注目されるようになっています。 力也君が絵をかくようになったきっかけをつくったのもお母さんでした。お母さんはそのときの様子を次のように書いています。 力也がまだ4歳の時のことでした。ショッピングセンターの中でうろうろしていたときに、絵の具セットが並んでいました。それを力也が指さすのです。ただ珍しいものをみつけてよろこんでいるのだなと思ったので、「まあ、きれいな絵の具ね」と言って通り過ぎようとしました。ところが、力也は不自由な手足をばたばたさせて、絵の具の前を離れようとしません。あんまりほしいそうにするので、絵の具セットと筆や画用紙を何枚か買いました。部屋に戻ると、すぐに絵をかくというのです。五本の指でしっかりと筆を握りしめ、口をとがらせて、全身に力をこめてかいているのがわかりました。 |
説明・語り6 力也君はこうして体調がいいと絵をどんどんかくようになりました。 力也君が6歳になったときにお母さんは、たまたま見かけた美術展に力也君の絵を応募しました。落選すると力也君がショックを受けると思い、ないしょで応募したのです。 絵は見事、ハワイ美術院展に入選しました。【作品1】それからお母さんは絵の先生にお願いして力也君に本格的に絵の勉強をさせました。力也君は夢中で絵をかき続けました。絵はどんどんと増えていき、日本総領事賞など数多くの大きな賞にえらばれるほどになりました。【作品2】 |
【力也君の作品 提示】
説明・語り7 力也君の絵を見た人は、次のような感想をもっています。 【作品3】「入場した瞬間に生きていることを感じ、涙があふれてきました。宇宙をつらぬいている生命が全作品にみられます。」 【作品4】「私は片目が見えません。今見える目もいつ失明するかわかりません。でも力也君の絵を見て元気になれそうです。」 【作品5】「力強く、心が澄んでくる思いがします。生あるかぎり、力也君のようにがんばっていかなくてははずかしいですね。」 【作品6】「私は美術学校出身者ですが、ひとの作品を見て涙したのは生まれてはじめてです。39年間生きてきてはじめてです。すばらしい感動をありがとう。」【作品7】 力也君の作品は今も多くの人に感動を与え、生きる希望を与え続けています。 【作品8】 |
説明・語り8 これが現在の力也君です。【力也君の写真】 力也君の活躍はテレビや新聞でも紹介されるようになりました。ハワイだけではなく日本でも展覧会が開かれるようになりました。そして来年度の教科書の絵にも採用されるほどになりました。(教科書を見せる) |
指示3 感想を書いてみてください。 |
発問8 力也君のためにできるかぎりのことをしたという力也君のお母さんは特別だったのでしょうか。もうひとつ紹介します。 これは何の時間だと思いますか。【午前5時46分】 では、これでわかりますか。 【午前5時46分 1月17日】 【午前5時46分 1月17日 1995年】 そうです。阪神淡路大震災です。 【午前5時46分 1月17日 1995年 阪神淡路大震災】 |
説明・語り9 1995年1月17日午前5時46分。阪神地方に大きな地震がありました。阪神淡路大震災です。冬の寒い時期、しかも朝の6時前です。多くの人たちはまだねむっていました。【震災の写真1 提示】 震度7【写真2】、亡くなった方が6400人以上【写真3】、けがをした人が4万人以上【写真4】、家屋は10万軒以上が全壊【写真5】、被害をうけた家屋は20万以上、【写真6】火事のために全焼した家屋が7000以上。【写真7】かつてないほどの大きな災害と受けました。【写真8】 |
説明・語り10 被害にあった人を助けるために消防隊、警察官、自衛隊、ボランティアの人と多くの人々がかけつけました。家を亡くしてしまった人は、体育館に避難していました。これから紹介するのは、救助のため体育館にかけつけた人が書いたものです。 |
資料2配布 読む。
指示4 感想を書いてみてください。 |
【画面終了】
説明・語り 11 力也君のお母さんや女の子のお母さんだけが特別だったのでしょうか。先生はそうではないと思います。ここにいるみなさんは、全員お母さんのおなかの中で育ち、そして生まれてきました。生まれたあともおっぱいで育てられました。母乳はお母さんの食べた食物のエキスです。それを1日に6回も与えると、お母さんの体に問題が生じてきます。歯が悪くなったり、肌にも影響が出てきます。歯が悪くなり、肌にも影響がでるのに、母乳を与えるときに「少しだけにしておくのよ」なんて言うお母さんはいません。「これだけの母乳だといくらになる」などと計算したりもしません。夜中でもおっぱいをあたえます。元気よく飲めば、安心して満足するのです。ただであたえて、その上にほほえみかえ、語りかけ、においとあたたかさでふんわりとつつみこんであげます。母乳だけではありません。 おしめの交換もそうです。きたないなどとは思いません。うんちの色や様子を見て健康かどうか判断します。かぜをひいて鼻をすすれないときは、親がすってあげます。だからといって、親はお返しをもらおうとは期待していません。あなたがたがじょうぶに育ち、そしてやがて自立していくことを願っているのです。 それはお父さんも同じ気持ちです。この中には今お母さんやお父さんと一緒に住んでいない人がいるかもしれません。それでも、やはりここにいるみんなは一人残らずお母さんとお父さんの大きな愛に包まれてきたのです。ビッグハグとは相手を強く抱きしめることを意味するそうです。それは大きな愛を意味します。力也君は大きな愛を受けて育ちました。あの女の子もお母さんの自分を犠牲にしても守ろうとした大きな愛がありました。みなさん一人一人も大きな愛を受けて育ってきたのです。そのことをどうか忘れないでください。 |
指示5 今日の授業の感想を書きましょう。 |
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【参考資料】
1 動物の胎児について
(1)『第2期教育技術の法則化18』(明治図書)佐々木俊幸氏の論文P.115〜119
(2)『命の授業』(深澤 久編著、明治図書) 赤石賢司氏の論文P.82
(3)『TOSS道徳トークライン』1999.No.18
松岡宏之氏の論文P.13〜14
2 浅井力也君について
(1)『TOSS道徳トークライン』1995.No.4
水野茂一氏の論文P.3〜4
(2)『TOSS道徳トークライン』1996.No.8
河田孝文氏の自作資料P41〜42
(3)『ビッグ・ハグ』(浅井三和子・西村一郎、実教出版)
(4)『夢色の絵筆』(遠藤町子、くもん出版)
(5)『CANVAS』(浅井力也・浅井三和子、フォレストクラブ)
3 阪神淡路震災 出動の記録
(1)『TOSS道徳トークライン』1996.No.7 駒井隆治氏の論文P.17〜18