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海の命

田代勝巳(TOSS SANJO)

『海の命』(6年 光村図書 下)を分析批評によって授業した。事件の要約、モチーフ、クライマックスを検討し、主題を考える授業である。

指導計画
第1〜3時  音読練習・意味調べ
第4時     設定と場面・起承転結の検討
第5〜7時  事件の要約
第8時     モチーフの検討
第9時     クライマックスの検討
第10時    題名の検討と主題を考える
第11時    主題の検討
第12時    評論文


第1時 教師の範読 音読練習
 教師が範読する。一気に全部読んでしまうのではなく、1ページごとに簡単な質問を交えながら読んでいく。
 そうすると子どもも集中して聞ける。
 (例)作者は誰ですか。誰が登場してきましたか。おとうはどうなったのですか。
 1ページほどずつ追い読みをし、その後、立って各自が音読する。このようにして、追い読みと、立って音読を繰り返す。
 題名の横に○を10個書き、上から二つを赤鉛筆でぬる。
 学校でも家でも読んだら、○を赤鉛筆で塗るように言っておく。

第2時 音読練習
 教師と子どものの一文交代読み。
 第1場面だけ立って音読する。
 終わった子からすわるようにして、子どもの読む速さを把握する。
 (1場面は約440字。1分少々で読めるのが速さのめやすである。)
 立って、各自全文通読。
 わからない言葉を意味調べする。
 
第3時 音読練習 意味調べ 
 一人ずつの一文読み。
 指名なし音読。
 意味調べの続き。
 はばかる、瀬、屈強、鼻づらなどの語を調べているか確認する。

第4時 設定と場面(起承転結)の確認
 指名なし朗読をする。
 物語の設定を確認する。設定とは、「時・場所・人」である。
(1)時 太一の一生
(2)場 海、海のある村
(3)人 

発問 登場人物は誰ですか。 

太一
太一の父
太一の母
仲間の漁師
瀬の主(クエ)
与吉じいさ

発問 この中でおかしなものはありませんか。

登場人物として不適切なものがあれば、検討する。

発問 中心人物は誰ですか

太一

発問 この物語はいくつの場面に分かれていますか。

光村の教科書では、1行あきになっているので、すぐに6つの場面に分けられる。

発問 6つの場面を起承転結に分けます。どのように分けますか。ノートに@〜Eまで書いて、切れ目に線を入れなさい。

書けた子から持ってこさせる。板書させる。
考えが3通りに分かれた。

(1)@  A      BCD  E
(2)@  AB     CD   E
(3)@  ABC    D     E

発問 転はどこからですか。

簡単に討論し、解を告げる。
転として考えられるのは、Dである。
したがって(3)のようになる。

第5時 事件(題材)を要約する

指名なし朗読をする。

説明 物語というのは、いくつかの事件が集まってできています。物語だけではなく、ドラマでも映画もそうです。事件がいくつか起きるようになっています。事件のことを題材という時もあります。(「事件 題材」と板書)
「海の命」という作品も、いくつかの事件が集まってできているのです。

発問 「海の命」では、事件はどこから始まっていますか。

事件の始まりと思える場所に線を引かせる。
「ある日、父は・・・・」(P6L11)から始まっていることを確認する。

発問 いくつの事件に分けられますか。

ノートに数字を書かせる。
6つであることを告げる。

発問 第一の事件は、P6L11〜P7L10です。では、この事件を20字以内で要約しなさい。

ノートに書かせてから、板書させる。
板書したものを10点満点で評定する。
評定のポイントは、次の通りである。
(1)日本語としておかしいものは0点
(2)文末は「太一の父」
(3)「瀬の主」「こときれる」(または亡くなる)が入っている。

最初は、当然点数が低い。
板書されたものを評定した後、「自信ある人はいませんか?」と聞いてもよい。

最後は、評定のポイントを説明しながら教師の解を板書する。

第1の事件 瀬の主をしとめようと亡くなった太一の父


発問2 2番目の事件は、P7L11〜P9L10です。20字以内に要約しなさい。

同様にノートに書かせてから板書させる。
評定する。
評定のポイントは、さきほどの同様だが、キーワードは次の通りである。
(1)文末は「太一」
(2)「瀬」「与吉じいさ」「でし」が入る

第2の事件 瀬に通う与吉じいさのでしなった太一


第6時〜第7時 事件(題材)の要約

 
 3番目の事件〜6番目の事件まで、ノートの要約、板書、評定と同様に行っていく。
  途中で、次のように説明してもよい。

要約というのは、正しい答えならほとんど同じ答えになります。書いてあることの大事なことを選ぶと同じようになるのです。

 キーワードと事件の要約は次のようになった。

第3の事件(P9L11〜P10) キーワード 「与吉じいさ」「海に帰った」「太一」

海に帰った与吉じいさに手を合わせる太一

第4の事件(P11〜P14L2) キーワード 「父の海」「瀬」「太一」

父の海である瀬にもぐり続ける太一

第5の事件(P14L3〜P16) キーワード 「瀬の主」「もりを突き出す」「太一」

瀬の主にもりをつきだす太一

第6の事件(P17〜P19L3) キーワード 「海の命」「瀬の主」「殺さずにすむ」「太一」

海の命に思えた瀬の主を殺さずにすんだ太一


第8時 朗読の評定 モチーフの検討

子どもに一人一文ずつ読ませ、10点満点で評定する。
よい読み方とは何か指導していく。
評定の基準は、次の通り。
(1)正確に読む。
(2)適度な速さである。
(3)句読点や字のあいているところで間をとる。
(4)はりのある声でよむ。
(5)場面にあった読み方をする。

パワーポイントで、今までの事件の要約を示す。そして、モチーフを説明する。

説明 物語はいくつかの事件が集まってできています。その全ての事件にわたって共通する事柄を中心題材(モチーフ)と言います。「海の命」のモチーフは何ですか。ノートに書きなさい。

※「モチーフ」は、作品によっては、中心的な事件、すなわちクライマックスが示す事柄と定義するときもある。
(参考 『向山洋一全集 50巻 向山型国語の授業の実践記』(P58〜P68)

子どもたちから次の考えが出された。

モチーフ

死  3人
命 16人
夢  3人


第9時 朗読の評定 クライマックスの検討
朗読の評定をする
その後、指名なし朗読

説明 クライマックス(板書)
物語の中で、今まで同じだったところ、ずっと変わらなかったところがコロッと変わるところがあります。その場所をクライマックスといいます、日本語で「最高潮」と言います。
「海の命」では中心人物である、太一の考えがガラリと変わったところです。ある一つの文から、太一の考えがガラリと変わっているところがあります。それは、どの文からですか。ノートに、その文を抜き書きなさい。

子どもたちは、次の4つの文を選んだ。
A これまで数限りなく魚を殺してきたのだが、こんな感情になったのは初めてだ。
B 水の中で太一はふっとほほえみ、口から銀のあぶくを出した。
C もりの刃先を足の方にどけ、クエに向かってもう一度えがおを作った。
D 「おとう、ここのおられたのですか。また会いに来ますか。」

理由も書かせ討論する。
討論の手順は次の通り。
それぞれの理由の発表。おかしなものからつぶす。残った2つあるいは3つで討論する。

討論の結果、Bとなった。

発問 クライマックスの前と後では、何が変わったのですか。何々と何々と短い言葉で書きなさい。

殺すー生かす
迷いー決まる
殺すー生かす
瀬の主ー海の命


第10時 題名を検討し、主題を考える
指名なし朗読

発問 「海の命」とは何の意味するのですか。ノートに書きなさい。

子どもに自由に発表させた。
・魚
・瀬の主
・太一の父
・大魚
・海
・命

指示 「海の命」の主題は何か、ノートに書きなさい。理由も書きます。

子どもたちは、次のように書いた。
(1)成長に関するもの
 @人間は苦を乗り越えるたびに成長していくものだ。
 A人間はまよいながら、決めていくものだ。
 B人間は考え方がかわるとちがうようにみえるものだ。
 C人間とは考え方が変わるものだ。
 D人間は夢があって、心が通じていくものである。
(2)生と死に関するもの
 @世の中には生と死がある。
 A人間は死ととなりあわせで生きている。
 B人間は生と死をさまよううものである。
(3)命に関するもの
 @世の中は自然を大切にしなければならない。
 A世の中では、動物や魚を簡単に殺してはいけない。
(4)その他
 @世の中とは奇跡が起きるものだ。
 A世の中、何が起こるかわからない。 


第11時 主題の検討

発問 考えた主題を大きく二つにわけます。A 成長 B命(生と死)です。「海の命」の主題は、成長についてなのか、それとも命についてなのか。どちらかを選ぶとすると、どちらに賛成ですか。ノートに書きなさい。

人数をきく。
A 10人
B 13人
それぞれの理由を指名なしで発表し、その後指名なし討論をする。

指示 今日の討論をもとに主題を考えて、ノートに書きなさい。

人間とは命を大切にするから、成長する。
人間は生と死があって大きく成長するものだ。
人間とは不意に夢が実現する。
人間とは命と向き合いながら成長するものだ。
人間は成長して生と死を感じる生き物だ。
人間は命の大切さに気づかなければならない。
人間は成長しても命の事は全く変わらない。
人間とは生き物が死んでも成長する。
人間とは命の大切さを知り、成長し、夢を実現させる生き物だ。
人間はいろいろな事件があるから成長する。
人間とはいろいろな出来事をバネにして成長するものだ。
人間とは成長しながら夢を実現させていく。
人間とは人が死ぬたび人が生きていると証明したとき成長する。
人間とはこの世に生をもって生まれてくる。そして成長してだれもがいつかを死を迎える。
人間とはなくなるものだ。
人間とは悲しいことがあると成長するものだ。
人間とは成長するたびに考えまで成長していくものだ。
人間とは成長するものだ。
人間とは命がある限り成長するものだ。
人間とは夢とともに成長するものだ。

第12時 評論文






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