小学校/道徳/生き方/幸せ/乙武洋匡


 猿渡 勲氏の「乙武洋匡さんから生き方を学ぶ」(『ヒーローから生き方を学ぶ道徳授業』明治図書)の修正追試です。「三つの幸せ」は『一隅を照らす人生』(神渡良平・PHP研究所)P142〜152を参考にさせていただきました。

 
幸せって何?
 
三条市立月岡小学校 田 代 勝 巳
 
 乙武洋匡さんの生き方を考えることを通して、人の幸せについて考える。

発問1 あなたは、幸せだなと思うときはどんな時ですか。 
指名して考えを聞いていく。
発問2 (乙武洋匡さんの写真を提示)この写真を見て、思ったこと、考えたこと、気づいたことを書きなさい。 
指示1 指名なしで発表しなさい。

全員に発表させる。

説明1 この方は乙武洋匡さんといいます(板書)。先天性四肢切断という病気で生まれつき手足がほとんどないのです。

発問3 あなたは乙武さんを幸せだと思いますか。それても不幸せだと思いますか。

幸せだと思うか不幸せだと思うか挙手させ、どうしてそう思うのか理由を簡単に聞いていく。

発問4 では乙武さんがどのように生きてきたみてみましょう。乙武さんが生まれて、お母さんと初めて会うの時のことです。乙武さんが生まれたとき、病院や周りの人はお母さんが自分の子供を見てショックを受けるといけないと思い、1ヶ月間会わせないようにしていたそうです。胴体にジャガイモがコロンとくっついているような体でした。一ヶ月後とうとう初めて会う時が来ました。病院では気絶して倒れるかもしれないとベッドまで用意したそうです。さて乙武さんのお母さんは、乙武さんを初めてみた時、その最初に何と言ったでしょうか。 

指名して考えを聞いていく。

説明2  「かわいい」と言ったのです。まわりの心配をよそに乙武さんのお母さんは「かわいい」と言ったのです。1ヶ月も我が子に会えなかったのです。手足がないという驚きよりも、やっとわが子に会うことができたという喜びの方が大きかったのです。乙武さんは、この第一印象は自分にとってとても意味のあることだと言っています。
発問5 手足がほとんどないという乙武さんができたことは次のうちどれでしょうか。
@字を書く Aスプーンを使って食べる   B歩く    C階段をのぼる Dトイレで用を足す  E鉄棒をする F友だちをつくる Gボールを投げる Hドリブルする I泳ぐ  J長なわとびをとぶ Kラブレターをもらう L着替える M けんかに勝つ  

カードに書き黒板に提示する。できるかできないか一つずつ聞いていく。一通り聞き終わったら、何か意見がないかきき、意見があったら簡単に話し合いをする。

指示2 乙武さんのビデオを見てみましょう。(乙武さんの映っているビデオを見せる。) 
説明3 乙武さんは、先ほどのあげた中のほとんどができます。鉄棒はジャングルジムの一番低いところでやっていたそうです。幼稚園の頃から友だちがたくさんいて、人気者でした。水泳にも挑戦しました。練習の結果6m泳げるようになりました。(『五体不満足』P.84〜89までを読んでもよい。) 長なわにも挑戦しました。特訓のすえ、34回も飛べるようになったそうです。でもできないこともあります。トイレで用を足すことと着替えることなどです。またできるということでも、人よりも時間がかかってしまいます。
発問6 乙武さんのクラスでは、乙武さんとドッジボールをする時どんなルールをつくったと思いますか。

指名して考えを聞いていく。

説明4 乙武さんがボールを持ったら、クラスのみんなは3m以内に近づかないといけないというルールをつくったのです。そうすると乙武さんもボールを当てることができました。野球の時でも、ボールが内野を越えたらホームランというルールがありました。乙武さんの「おと」をとって「おとちゃんルール」と呼ばれていたそうです。
発問7 乙武さんが小学校1年生の時、担任の高木先生は学校の中で車椅子を禁止にしました。なぜでしょうか。 
指名して考えを聞いていく。

説明5 担任の高木先生は、乙武さんを特別扱いしたくなかったのです。みんなに何でもしてもらって甘えた人間になるのをふせぎたかったのです。もう一つは、車椅子にのりっぱなしになると筋肉が衰えて、自分で動けなくなってしまいます。筋肉をつけるためにも車椅子を禁止したのだそうです。でもおかげで、乙武さんは自分でできることをふやし、いろいろなことに挑戦するようになったのです。これも高木先生のおかげであると今でも感謝しているそうです。
発問8 乙武さんは自分の人生を幸せだと思っているでしょうか。それとも不幸だと思っているでしょうか。その理由も書きなさい。 

説明6 人の幸せには3種類あると言われています。一つは「人にしてもらう幸せ」です。赤ちゃんの時、のどが渇けばおっぱいをもらい、おむつが濡れればおむつをかえてもらます。これはとても幸せなことです。二番目は、自分で「できるようになる幸せ」です。自転車に乗れるようになる。鉄棒ができるようになる。わり算ができるようになる。自分でできるようになるとうれしくなります。これができる幸せです。でもその上があります。それが「人にしてあげる幸せ」です。人が喜ぶ姿を見るというのはとても気持ちのよいものです。いいことをしたなあと自分の心がとてもはれやかになります。これが「人にしてあげる幸せ」です。乙武さんはどうでしょうか。お母さんや友だちから「してもらった幸せ」があります。自分でできるようになった幸せも持っています。そして「障害者の暮らしやすい社会をつくる」という第3の幸せに向かって努力しています。

説明7 乙武さんは『五体不満足』という本の中で次のように言っています。「いくら地位や名誉があったところで、まわりから嫌われていたら、そんなにつまらないことはない。つまり、お金や地位や名誉があってもいい人生とは限らないのだ。他人、社会のために、どれだけのことができるのか。まわりの人にどれだけ優しく生きられるのか。どれだけ多くの人と分かり合えるのか。どれも難しいことではあるけれど、これが実践できれば、ボクの人生は幸せだったと胸をはれる気がする。」(『五体不満足』P.197〜198・講談社より) そして、この本のあとがきにはこう書いてあります。「障害は不便である。だけど不幸ではありません。」
 
指示3 今日の感想を書きなさい。

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